赤ちゃん用の液体ミルク発売が示唆すること

海外から40年遅れて発売

先日、NHKの朝のニュースで、赤ちゃん用の液体ミルクの話題が放送されていました。
店頭販売が始まって3カ月、育児中のお母さんからの、外出時や夜中の授乳で助けられたという声だけでなく、授乳が簡単になったことで夫や祖父母からの協力が得やすくなったという報告でした。
驚いたのは、欧米では40年前から普及していたという事実。
日本では、製品の衛生基準がなく、メーカーもニーズを把握できないという理由で製造されず、今回発売されたのは、一人の女性の地道な署名活動が、国とメーカーを動かしたおかげでした。
また、熊本地震で海外から液体ミルクが支援物資として届き、その良さが認識されるようになったことも発売を後押ししたそうです。

それを聞いたとき、いろいろな意味で、これはいかん、と思いました。
高齢化が急速に進み、私たちの意識や、生活の仕組みを大きく変えなければいけない中で、日本の変化のスピードの遅さを表す象徴のような気がしたのです。

日本で液体ミルクが発売されなかった理由は?

まず思ったのは、自分が子育てしていた20年前、液体ミルクという存在を全く意識することもなかった、ということです。
海外では普通に使われているということを知らなかった。
余裕もなく、液体ミルクがあればいいのに、と疑問を感じることもなかった。
しかしその後の20年、ネットの普及が加速化しても、日本で発売されるまでさらに20年かかったとは。
何が止めていたのでしょうか?
ここから先は、あくまで私の推測です。
まず、我慢強いお母さんたちから、ニーズが出なかったというのもあるでしょう。
母乳育児へのこだわり、ミルクがあるだけでもありがたい、子育ては楽してはならない、的な感覚です。
「自分のおなかを痛めて産んでこそ母親」という価値観から、日本でいまだに無痛分娩を選ぶ妊婦さんが少ないこととも関連している気がします。
夜中、睡魔と闘いながら10分以上かけてミルクを作るのは大変です。
外出するとき、70度以上のお湯と、冷ます用の水、回数分に分けた粉ミルクの容器を用意すると荷物も重くなります。
液体ミルクの1回あたりの費用は、粉ミルクの約4倍ですが、夜間と外出の時だけ、など併用すればよいですし、何より多くの人が育児参加できることを考えれば費用対効果は大きいと思います。

良いものはスピード感をもって取り入れる意識を

私もそうですが、変化を受け入れるのはどうしても抵抗があります。
人に迷惑をかけてはならないとか、手抜きをしてはならない、とか、昔からの価値観がかかわると、尚のこと使うことがはばかられる。
しかし、日本は今後さらに、人が足りなくなります。
今の生活レベルを維持するためには、今いる人の生産性を大きく引き上げなければいけません。
女性たちが安心して子供を産み育てられるためには、便利なもの、手抜きできるものはどんどん取り入れたい。
高齢者が、生き生きと働き、活動できるために便利な仕組みはどんどん取り入れたい。

海外で当たり前に普及し、良さが実証されていることで、日本では取り入れられていないことがまだ沢山あるのではないか。
良い仕組みを取り入れるスピードをもっと上げていかなければいけない。

今回の報道をみて、自戒を込めてそう思いました。

この記事を書いた人

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重次泰子

熊本県出身。
慶応義塾大学、経済学部卒業。
銀行で8年勤務し、その後4年ほど2人の子育てに専念。
その後シンクタンクで11年派遣社員(嘱託研究員)、2年間研究員として勤務。
この間、コーチングに出会い、学ぶ中で、「メンバーの幸福度とチームの成果の両方を引き上げる仕組みづくりはないか」という問題意識を持ち、Gallup認定ストレングスコーチ資格を取得。

2018年10月「リソース活用ラボ」開業。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
ギャラップ認定ストレングスコーチ

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