「IT現場を強くする究極のチームビルディング」(斉藤秀樹著)を読んで考えたこと

私が断片的に考えていたことを、すべて体系化してくれた本

読みながら、「そうそう、その通り!」を30回は言っていました。
この本は題名に「IT現場」とありますが、多くの職場で全く同じことが言えると思います。
素晴らしい良著でした。
すべての日本企業の管理職、経営幹部の方に読んで欲しい本です。

基盤(be=あり方)ができていないのに、やり方を変えても無駄

納期が守れない、メンバーのモチベーションが低いなど、チームに問題があったとき、リーダーはやり方を変えようとします。
しかし、問題が発生する背景を探ると、やり方以前に、チームの「あり方」、つまり基盤ができていないことが多い、というのです。
これは、日本の組織の核心をついていると思います。
ギャラップ社の説明会で、「職場の従業員のストレスの70%は上司との関係である」というデータが示されていました。
メンバーが力を発揮できるような基盤づくりにこそ、組織は注力すべきだと改めて感じました。

安全な場を作ることが不可欠

本音が言えなければ「チーム」ではない。
成果を上げる「有能なチーム」になるか、「無能な組織」のままかの違いは「安全な場」です。
そのためには、リーダーはポジティブな言葉、表情、行動、態度、姿勢を率先して示そう。

至極当たり前で、簡単なことだと思いますが、これができていないことが多いのです。
リーダーが朝、目を合わずに挨拶する、すぐに怒ったような表情をする、高圧的な態度をとる、すべてを管理したがるなど、よく目にする光景です。
リーダーが率先してポジティブな態度、言葉を使うことで、メンバーが安心して仕事に集中できることを、是非自覚していただきたいと思います。

むやみに高い目標を掲げ、尻を叩くだけのリーダー

筆者はこのタイプのリーダーは失格だと断言しています。
その裏付けとして、ここでは面白い実験を行っています。
20人のチームが円になり、隣の人の名前を言いながらボールを渡す「ネームスピード」というアクティビティです。
1回目のタイムが50秒でした。
次に、リーダーが25秒という過剰に高い目標を掲げて行ったところ、タイムは49秒と、殆ど改善しませんでした。
次に、皆が安心して達成できる45秒を目標にすると、一機に31秒まで改善したのです。

実は私も似たような体験があります。
以前、ある上司に、私にとっては極めて厳しい課題を1週間で作成し提出するよう求められました。
その時の上司の顔つき、声、足音まで覚えています。
常に動悸がして仕事に集中できない、進捗しない、さらに焦る、の悪循環に陥ってしまいました。

大企業にとっては、少しの勇気が難しい

この本が提唱するチームビルディングは、難しいスキルは必要ありません。
最も難しいのは、新しいことをやってみる勇気だと思います。
良いことかもしれないが、わざわざ試すことはしない。
ダン・アリエリー先生が唱えたように、人間は非合理的です。
何もしないことは非合理的だと認識し、ほんの少しの勇気を持つことが大切だと思います。

この記事を書いた人

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重次泰子

熊本県出身。
慶応義塾大学、経済学部卒業。
銀行で8年勤務し、その後4年ほど2人の子育てに専念。
その後シンクタンクで11年派遣社員(嘱託研究員)、2年間研究員として勤務。
この間、コーチングに出会い、学ぶ中で、「メンバーの幸福度とチームの成果の両方を引き上げる仕組みづくりはないか」という問題意識を持ち、Gallup認定ストレングスコーチ資格を取得。

2018年10月「リソース活用ラボ」開業。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
ギャラップ認定ストレングスコーチ

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