働くことの意味  ダン・アリエリー著「不合理だからすべてうまくいく」より

人間は面白い

人間の非合理なところがとにかく面白く、この人の行動経済学の本を何冊も読んでいます。
読めば読むほど、人間という生き物がいとおしく感じてくるから不思議です。
ダン・アリエリー先生は、実験により、沢山のことを発見しています。

  • 高い報酬は逆効果であること
  • イケアの家具のように自分で組み立てて完成させたモノは、愛着が増し、評価が上がること
  • 自分のアイディアは、他人のものより良いというバイアスが生じること
  • 人間は犠牲を払ってでも報復をしようとすること

中でも、人間が働くことの意味についての実験はとても印象的でした。

3つのグループによる実験

ある課題を3つのグループに実施してもらいます。
その課題とは、一枚の紙から文字を探すもので、1枚ごとに報酬がもらえますが、枚数を重ねるごとにその額は減っていきます。

  • 1つ目のグループは、1枚終わるごとに、実験者が内容を確認し、うなずいたのちに回収。
  • 2つ目のグループは、1枚終わるごとに、実験者が内容を確認せず回収。
  • 3つ目のグループは、1枚終わると、実験者が目の前で成果の紙をシュレッダーで細断。

結果、確認するグループは9.03枚まで作業を続けた一方、細断されたグループは、6.34枚で作業を終えてしまいました。
興味深いのは、2番目のグループ。
結果は6.77枚で、成果を細断された人たちとほぼ同じだったのです。
人に確認してもらい、うなずいてもらった人は仕事の喜びがあり、やる気が続きました。
しかし、成果を目の前で粉々にされた人と同様に、無視された人も、やる気をなくしてしまったのです。
アリエリー教授は述べています。

部下のやる気をなくしたければ、成果を粉砕したり、無視したりすれば簡単にできる。
やる気をアップさせるには、気を配り、元気づけることだと。

さらに、細断された人たちは、いくらでも成果をごまかし、お金だけもらうこともできましたが、そうしませんでした。
モチベーションは「お金」ではない、人間の性質が浮き彫りになった結果でした。

働くことの意味

私も自分の経験を思い出しました。
当時上司のプレゼン資料を、数週間かけて作成していました。
当日、うまくいったのか、聴衆の反応はどうだったのか、など結果が気になります。
終了後、上司が何も言ってくれなかったときは、自分は何のためにやっているのだろうかと、ひどく落ち込んだものです。
逆に、今日はとてもうまくいった、この部分で特に反応が良かった、ありがとう、とねぎらいの言葉をかけてくれた時もありました。
その時は、よし、次も頑張ろうと、なんとも満ち足りた気持ちになりました。

仕事に意味があるかどうかで、モチベーションが大きく変わること。
部下のやる気を奪うのは驚くほど簡単であること。

アリエリー先生の実験結果は、組織運営に、大いに活かせると思います。

この記事を書いた人

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重次泰子

熊本県出身。
慶応義塾大学、経済学部卒業。
銀行で8年勤務し、その後4年ほど2人の子育てに専念。
その後シンクタンクで11年派遣社員(嘱託研究員)、2年間研究員として勤務。
この間、コーチングに出会い、学ぶ中で、「メンバーの幸福度とチームの成果の両方を引き上げる仕組みづくりはないか」という問題意識を持ち、Gallup認定ストレングスコーチ資格を取得。

2018年10月「リソース活用ラボ」開業。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
ギャラップ認定ストレングスコーチ

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