村木厚子著「あきらめない」を読んで

冤罪事件の被害者

村木厚子さんは、厚生労働省の局長時代、郵便不正事件の被疑者として逮捕され、1年3カ月後に無罪が確定しました。
この本を読もうと思ったのは、先日村木さんがテレビ番組に出演されていたことがきっかけです。
役所を退官された今は、つらい境遇で苦しむ若い女性を助けるために、積極的に活動しておられます。
ご自身が拘置所にいる間に、沢山の女性に出会ったそうです。
皆素敵な女性なのに、虐待など不遇な身の上で居場所がなく、犯罪に走ってしまった。
その時に、「この人たちを救いたい」と思ったと。
村木さん自身がつらい経験をされているときに、周りの人にも心を配れるとは、なんという人だろう、と思いました。
「これからも、一番陽の当たらない人達の役に立ちたい」という言葉を聞き、この人のことをもっと良く知りたい、そう思ったのです。

謙虚で客観的な視点

全体を読んで感じたのは、村木さんの謙虚な姿勢と、自分のことを客観的にみつめる冷静さです。
村木さんは、高知大学を出て上級職試験に合格し、男女雇用機会均等法より前に労働省(現厚生労働省)に入省します。
ずっと働き続けたいと思い、考えるよりやってみる、をモットーに懸命に仕事をします。
結婚し、2児の子育てをしながらの生活もポジティブに捉え、合言葉は「綱渡り、下を見なけりゃ怖くない」。
自分はリーダーっぽくないとして、多くの意見を集約して調整することに努めます。
自分のスタイルを追求する中で、組織がうまくいくかどうかは、部下との日頃のコミュニケーションが大切だと気付きます。
そして、「自分の思う通りに動いてほしい」という姿勢から、「人それぞれの個性があり、仕事のやり方もいろいろあっていい」に変わっていきます。

逮捕されて組織の在り方を考える

逮捕、長期の勾留期間、その間の検察の取り調べ、無罪を勝ち取るまでの検察との攻防、マスコミの報道。
すべてを振り返って、村木さんは、組織の在り方を変えるべきと述べています。
検察が本来やるべきことをやっていれば、今回のような冤罪事件は起こらなかった。
マスコミも検察も、一人一人は崇高なミッションを持っているけれども、外からのチェックを受けにくい。
個人のモラルではなく、組織の仕組みとして、どこかで止めるシステムが必要だった、と。

行動経済学により、人間は非合理的な行動をとることが解明されてきました。
人間は間違える、それを前提に組織を作らなければならない。
村木さんの事件の教訓を私たちは活かせているのだろうか、と改めて考えさせられる一冊でした。

この記事を書いた人

重次泰子

重次泰子

熊本県出身。
慶応義塾大学、経済学部卒業。
銀行で8年勤務し、その後4年ほど2人の子育てに専念。
その後シンクタンクで11年派遣社員(嘱託研究員)、2年間研究員として勤務。
この間、コーチングに出会い、学ぶ中で、「メンバーの幸福度とチームの成果の両方を引き上げる仕組みづくりはないか」という問題意識を持ち、Gallup認定ストレングスコーチ資格を取得。

2018年10月「リソース活用ラボ」開業。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
ギャラップ認定ストレングスコーチ

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