多くの人がずるをするという事実 「ずる 嘘とごまかしの行動経済学」を読んで考えたこと

多くの人が不正をしてしまう

イグノーベル賞を受賞した行動経済学の第一人者、ダン・アリエリーの本です。
様々な実験によって、人間の行動を解き明かしていて、非常に面白い。
まずわかったことが、多くの人がちょっとだけ不正をするという事実です。
例えば、数学の問題を解かせ、解いた問題の数だけの報酬をもらう実験。
説いた証拠を破棄して、自己申告で報酬をもらうと、ずるをして少し多くもらう人が多数出るのです。
面白いのは、問題を解く前に、聖書に手を置いたり、倫理規定にサインしてもらったりすると、不正が減るのです。
逆に、現金ではなく、現金の引換券をもらうことにすると、不正が増えます。

「どうにでもなれ」効果

悲しいのは、小さな不正を一度してしまうと、そのあと「どうにでもなれ」効果が働き、小さな不正を続けてしまう、という事実です。
そして、他人の不正を見た人にも伝染する。
ダン・アリエリーは、エンロン事件、リーマンショックなど、不正が企業全体や、社会全体に広がるメカニズムを実験で説明してくれます。
自分と同じ仲間うちで起こった不正は、罪の意識を生じにくくさせてしまうというのです。
このブログで何度か取り上げていますが、日本でも、組織的な不正や犯罪が後を絶ちません。

文部省での入学試験の不正、財務省での文書改ざんなど、官僚組織の不正。
医学部で、女子生徒の入試結果を長年にわたり操作していた問題。
自動車メーカーや、免振・制振ダンパー企業のデータ改ざん問題。
旧優生保護法によって、障害のある方たちが長期間にわたり、強制的に不妊手術を受けさせられていた問題。

仲間内で行われた不正や、倫理上おかしいことについては、聖書や倫理規定のような「リセット」機能が働かず、「どうにでもなれ」効果により、続けてしまうのだというのです。

仕組み作りが大切

宗教でいうと、ユダヤ教の贖罪の日、イスラム教のラマダンが、「リセット」の役割を持つと指摘しています。
「官僚や企業幹部が宣誓をし、倫理規範を用い、時には許しの求めを用いること」が解決につながるかもしれない、とも述べています。
簡単に前例を踏襲できないように、同じことをやるにしても、新しく書類を作って、サインする、でもいいかもしれません。
当事者意識や責任の意識が生まれれば、リセットになるのかもしれません。

まずは人間が不正をしてしまう動物であるという事実を知り、受け入れること、そのうえで防止する仕組みをきちんと導入することが大切だと痛感しました。

この記事を書いた人

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重次泰子

熊本県出身。
慶応義塾大学、経済学部卒業。
銀行で8年勤務し、その後4年ほど2人の子育てに専念。
その後シンクタンクで11年派遣社員(嘱託研究員)、2年間研究員として勤務。
この間、コーチングに出会い、学ぶ中で、「メンバーの幸福度とチームの成果の両方を引き上げる仕組みづくりはないか」という問題意識を持ち、Gallup認定ストレングスコーチ資格を取得。

2018年10月「リソース活用ラボ」開業。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
ギャラップ認定ストレングスコーチ

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